田中先生オススメの美術漫画「ブルーピリオド」を読んでみました

こんにちは。フリーランス塾メンバー、音楽講師&ラウンジピアニストの岩倉です。

「勇気の世界史」5回目から、休憩中のBGM、ゲスト講師登壇の際の出囃子を担当させて頂いております。お聴きになって頂いている皆さま、いつもありがとうございます♪

「勇気の世界史」は「会計の世界史」同様、毎回さまざまな文化的トピックが織り交ぜられて楽しいですよね。特に絵画に関するトピックが充実しています! 

田中先生ご自身、元々は美術に関心の高いタイプではなかったそうで、近年の取材活動の中で猛勉強されて専門家はだしの知識を身につけられたとか。先生のお話が、長年その世界にどっぷり浸かった業界人の語りより面白く感じるのは、低関心からスタートしながら、だんだんと美術の世界にハマっていった素人ならではの喜びを私達に追体験させてくれるからかもしれませんね。

玄人には当たり前の事でも、初心者からすれば「へー、そんな仕組になってたんだ!」とか、「いや、そこにそんな意味があるとは!」とか、楽しい驚きに満ちていることって意外とありますよね。そのあたりの感覚も、持ち前のエンタメ性にてフレッシュに伝えてもらえる「勇気の世界史」、私も一ファンとして毎回楽しんでいます。

さて、そんな田中先生がFacebookの3月25日付のタイムラインで絶賛された、「ブルーピリオド」という漫画があります。

『これはいかんなあ、マジでいかん。読み始めたら止まらない。美術漫画ブルーピリオド。教えてくれた守屋さんを営業妨害で訴えたい。』

先生にこんな事を言われたら、読むしかないじゃないですか(笑)!

気になって近所のTSUTAYAで1巻をレンタルして読んでみたら、これがヤバ過ぎるレベルで面白く、Amazonにて大人買いをしてしまいました。

ストーリーを簡単に言えば、「ドラゴン桜」の藝大受験版。

成績優秀で世渡り上手な金髪の高校生男子、矢口八虎(やぐち やとら)が、高校2年生の6月のある日、美術室で偶然目にした美術部員の作品に心を奪われる所から物語は展開し、そこから紆余曲折の心情変化をしながらも、美術顧問との対話を経て、実質倍率200倍の東京藝術大学の合格を目指すと決意する所から物語は加速していきます。

この漫画、何が面白いかと言えば、セリフ、コマ割りの一つひとつに強く共感したり、思わずページを止めて考えさせられたりするシーンがとにかく多いという事。気になった箇所に付箋を貼りつつ読んでいたら、下手なビジネス書を遥かに凌ぐ大量のポストイットが消費される羽目になりました。

作品中で気になったシーンは本当に色々あるのですが、付箋を貼った箇所をざっと見返してみると、特に気になったシーンは以下の2つの観点に集約されている感じでした。

1)フリーランスの目線から気になった箇所

2)ピアニストの目線から気になった箇所

まず、フリーランス視点の方から語らせてください。

美術の世界で食べて行く人間は、フリーランスの典型的存在。主人公の矢口は、その気になれば早慶クラスの大学に進学し、一般的な進路も余裕に選択できる器用さを持ち合わせています。それなのに敢えて、経験ゼロから無謀とも思える藝大受験に向けて奮闘する中での心情描写や、登場人物達との会話には、自分自身の価値観を真剣に見つめつつ、それを体現する生き方を選んだ者特有の覚悟と葛藤が実に上手く表現されているのです。

印象的なシーンを一つ紹介します。

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矢口と美術部の佐伯先生との進路相談のシーン

矢口:

「食べていける保証がないなら、美大にいくメリットってなんですか?」

佐伯先生:

「・・・・・そうねえ・・・なら、どうして普通の大学なら食べていける保証があるんでしょう? 今は東大生も就職が難しいと言われる時代ですよね? なら一芸持ってる美大生はある意味有利かもしれませんよ(中略)

『好きなことは趣味でいい』

これは大人の発想だと思いますよ」

矢口: 「えっ・・・」

佐伯先生:

「誰に教わったか知りませんが、頑張れない子は好きなことがない子でしたよ。

好きなことに人生の一番大きなウエイトを置くのって普通のことじゃないでしょうか?」

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このシーン、脱サラして音楽を生業としている私には特に強く響きました。かつてサラーリマン時代、「音楽は仕事にしたら大変だよ。趣味として楽しむのが一番いいんだよ。」なんて言葉をさんざん聞かされ、その忠告を真に受けなかった自分がここにいるのですが(笑)、リスクをとったからこそ味わえる感覚や、見える世界というのは確かにあるものです。まあ、バラの道でもあり、イバラの道でもありますが…

今度はピアニスト視点から話します。

音楽を題材にした漫画は、「のだめカンタービレ」や、「BLUE GIANT」「坂道のアポロン」など色々あり、それぞれに「なるほどね~」とか「そうだよね~」と思える箇所はあるのですが、自身のフィールドに近い話は、悪い意味で同業者ならではの批評精神というか、牽制というか、どうにも面倒くさいフィルターがかかって素直に入ってこない部分もあるのです。「まあ、所詮フィクションだからな。。。」って感じのヤツです。

ところが、私にとってはアウェイなはずの美術についての解説や、それにまつわる心情描写から、「こういう事って音楽にもあるな!」とか、「これを音楽に当てはめるとどうなるだろう?」とか、音楽漫画以上に前のめりな連想や思索が広がる事が「ブルーピリオド」では多く起こりえるのです。

こちらも具体的なシーンをひとつ。

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佐伯先生から課された膨大な制作課題に、海野君(オタク系美術部員)が異議を申し立てるシーン

海野:

「つーか前から思ってたんですけど、そもそもデッサンって必要なくないですか?

ネットにはデッサンやったことなくても上手い人なんていくらでもいますよ。

だいたい私が書きたいのは美少女で、石膏像とかティッシュ箱じゃないんですよ」

佐伯先生:

「・・・・・そうですね、まあ結論から言いますと

デッサンをすれば絵は上手くなる、でもやらなくても絵は上手くなります」

ゴク… ツバを飲み込みながら佐伯先生の話に耳を傾ける生徒達

「そもそもデッサンとは、形 空間 質感を把握して観察力と技術力をあげる修練法のこと

つまり自分の描きたい絵にあった修練法であればなんでもいいんですよ

(中略)

ただ、そういう人は毎日何時間もかけて、絵を描いたり、作品を作ったり、他の作家や業界のことを研究していますよ。デッサンの代わりにいろんな努力をしているだけで、そういう人は結果としてデッサンが必要なかっただけです。

デッサンは「自分の描きたいものを描く」「自分の能力を向上させる」ための手段で、あらゆる修練法の中で誰にでもできて、かつ上達が早い方法です。
答えではなく公式を学ぶような方法ですので応用もできますし、描きたい絵や上達の方法がわからないのであればとりあえずデッサンをおすすめします。」

海野: 「・・・・・なるほど」

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汎用的な連想が可能なシーンだと思います。

皆さまもご自身のフィールドに置き換えて、色々と思う所があるかもしれませんね。

藝大合格を目指す、スポ根系受験漫画でありながら、キャラクター設定が面白く、心情描写もリアルで繊細。読み応えのあるストーリーを持ちながら、読み手によって様々な受け取り方が可能な遊びの部分もしっかりある。いや、これはハマります!!

漫画の魅力はストーリーやセリフだけでなく、キャラクターの造形や、コマ割りの巧拙などビジュアルな要素もかなりを占めます。コミックのレビューが難しいのは、このあたりの魅力を文章だけで伝えるのが本当に難儀だということ。

色々書きましたが、もしこのコラムにて「ブルーピリオド」に興味を持って頂けたのであれば、ぜひ実際に読んでみてください。

Facebookのスレッドで、読んだ皆さんの感想や、イチ押しのシーンなどシェアし合うのも面白いかもしれませんね。

「ブルーピリオド」本当にオススメです! 

読んだ後には、絵を観るのがさらに楽しくなるでしょう。コロナが一服したら、ぜひ美術館に行きたいものです♪

フリーランス塾メンバー

岩倉 康浩

銀座 ST.SAWAIオリオンズ 専属ピアニスト

江古田Music School 代表

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